一般社団法人 日本有機農産物協会(Japan Organic Products Association)

コラム

VOL.9 オーガニック茶のススメ【後編】「お茶栽培と農薬」

※本記事はオーガニックBtoCサイトより移管した記事になります。

https://organic-btoc.com/index.html

「オーガニック茶のススメ」前編では、お茶に期待できる様々な健康効果についてお話ししました。けれども、1つ、気になるポイントがあります。ツバキ科に属するお茶の樹はとても虫がつきやすい植物であるため、一般的な栽培では多くの農薬が使われているということです。

野菜の場合、洗ったり、皮をむいてから調理したりして食べるのが一般的ですが、茶葉に農薬がついていたら、そのままお茶に溶け出したものを飲むことになってしまうし、抹茶や粉茶などは茶葉そのものを飲み込んでしまいますから、少し心配になりますよね。

お茶への農薬散布は、通常、摘み取る時期の一定期間前までに行われます。散布された農薬は、蒸発したり、朝露や雨で洗い落とされたり、日光によって分解されたりするため、摘み取り時期にはほぼ消失していると言われています。また、食品に使う農薬の種類や散布量については国が基準を定めており、国内で流通する食品は、各都道府県が年度ごとに検査を行なっています。ただ、気になるのは、お茶の残留農薬基準は他の農作物の基準より高いということ。

お茶に使用される農薬は100種類以上ありますが、その中の一部に関して、大豆やお米の基準と比べてみましょう。

このように、お茶の方が1000倍多いものもあります。上記の数値は、「この基準を超えていたら流通できない」というものであり、この数値の農薬が必ず残留しているということではありません。が、EUの残留農薬基準は日本よりもはるかに厳しく、お茶の場合、約500倍もの差がありますので、私たち日本人は、残留農薬について、もう少し意識を向けてみた方がいいのかもしれませんね。

かつては、「オーガニックのお茶は旨みや香味が弱くて美味しくない」という声を聞くことが多かった時代もありました。オーガニック茶と一般栽培茶の食味を比較した詳細なデータはありませんが、お茶農家さん達の間では、「農薬を使わずにお茶を育てると、どうしても虫がつきやすくなるので、お茶の樹が自ら旨みを弱くして、虫の害を防ぐようになる傾向があるような気がします」という意見があったことも事実です。けれども、生産者さん達の努力により、近年は、一般栽培茶に勝るとも劣らない、美味しいオーガニック茶も生産されるようになってきています。

最近、茶葉を粉茶にして飲んだり、スイーツの材料として食べたりする機会が増えていますから、農薬に頼らずに育てたオーガニック(有機)のお茶を選んでみてはいかがでしょう?

ライター 小林 さち

日本語学校で教師をしていた20代の頃、生徒さん達が自国の政治・文化・環境問題等について熱く語る様子に刺激を受ける。「自分も“国の底力”を支えるような仕事がしたい」「国の底力ってなんだろう?…まずは“食”と“農業”では?」と、オーガニック系食材宅配会社に転職。仕入れ・商品開発担当者として、全国の農家さん・漁師さん・食品メーカーさん等を訪ね歩く数年間を送る。たくさんの生産者や食材と触れ合う中で、「この国には、良い食品を作ってくれる人が思いのほかたくさんいる。でも、その良さが、生活者(消費者)にきちんと伝わっていないケースが多々あり、良いものがなかなか広がっていかない」ということを痛感するように。以降、広告宣伝の部署に異動した後、独立。現在はフリーランスの立場で、広告プランニング・コピーライティング・商品ラベルやパッケージの企画・食生活や食育に関する記事執筆等を手掛けている。