一般社団法人 日本有機農産物協会(Japan Organic Products Association)

コラム

VOL.21 美味しくなったBIOワイン(オーガニックワイン)~人間と葡萄との対話から芳醇なワインが生まれる

※本記事はオーガニックBtoCサイトより移管した記事になります。

https://organic-btoc.com/index.html

長年に渡り、「美味しくない」と言われ続けてきたBIOワイン(オーガニックワイン)。ワイン好きな人々の間でも、美味しいワインの話題にBIOワインの名前が登場することはありませんでした。残念ながら、かつて、美味しくないBIOワインがたくさん流通していたのは事実です。ところが近年、世界各国で美味しいBIOワインが登場するように。いったい何が変わったのでしょう?

では、まず、美味しいBIOワインを造るのが難しかった理由を見てみましょう。

【BIOワインを美味しく作るのが難しかった理由】
①原料となる葡萄を農薬や化学肥料に頼らずに育てるため、“病気にかかりやすい”、“栄養分が足らずに貧弱な葡萄に育つことが多い”等の問題点がありました。
※貧弱な葡萄 → ポリフェノール・酸・糖度などが足りない葡萄

②ワイン造りでは、通常、酸化防止の目的で亜硝酸塩が使用されます。EUのBIOワイン認証の規定でも亜硝酸塩は使用可能で、使用するか否かは生産者に判断が委ねられているのですが、多くのBIOワイン生産者は使用しません。しかし、亜硝酸塩を使わないワイン造りでは、青臭い匂い(アセトアルデヒド)を抑えられなかったり、香味を低下させてしまう微生物を死滅させることができなかったりするため、ワインの品質が劣化しやすいという弱点がありました。

③BIOワインは清澄や濾過といった工程を行わないものが多く、その場合、瓶詰めされたワインの中に酵母や乳酸菌が残ります。保存方法によってはそれらが増殖し、濁りや臭みなどが発生する場合がありました。

このようにBIOワイン造りは、薬品に頼らない製法であるがゆえ、品質劣化が起こりやすかったのです。では、上記のような問題点を、生産者はどのようにして解決してきたのでしょうか?

【BIOワインを美味しくするために生産者が努力したこと】
①長い時間と手間をかけ、オーガニック葡萄栽培に適した土づくりに努めました。「どうすれば、糖度と酸度のバランスが良く、深いコクをもった、色の良い葡萄が出来るのか?」を求めて、土壌改良を重ねたのです。

②できるだけ亜硫酸塩を使わずに、酸化・細菌汚染・微生物増殖等を抑えるため、醸造場の衛生管理を徹底し、常に清潔な環境を保つことでリスクを軽減しました。

③醸造中も、瓶詰後の熟成期間も、きめ細やかな温度管理をおこなって劣化防止に努めました。

かつてのBIOワイン生産者は、「化学的な農薬や添加物を使わない」ということだけにこだわり、醸造は“放置して自然に任せる”スタイルが多かったため、ワインにとって大切な香り・色・味わいを追求するところまでは到達していませんでした。しかし、葡萄はとても繊細な果実で、ほんのわずかな土壌の違いや天候の違いによって味や香りが左右されますし、醸造環境の違いによって出来上がるワインの味も大きく変わるもの。化学薬品に頼らない分、人間が丁寧に葡萄と向き合って対話をし、微生物の力を借り、時間をかけることで、芳醇なワインが生まれるというわけです。

花のように華やかな香りのもの、カラメルのような甘さを持ったもの、どっしりとしたコクと渋味が特徴のもの…等々、生産者の努力によって、BIOワインも様々な香りや味を楽しめる時代になってきました。ネットや本で情報収集をしたり、BIOワインを多く取り扱うお店で相談したりしながら、お気に入りの1本を探してみてはいかがでしょう? お友達と“私のお気に入り”を持ち寄って、飲み比べパーティーを開くのも楽しそうですね。

ライター 小林 さち

日本語学校で教師をしていた20代の頃、生徒さん達が自国の政治・文化・環境問題等について熱く語る様子に刺激を受ける。「自分も“国の底力”を支えるような仕事がしたい」「国の底力ってなんだろう?…まずは“食”と“農業”では?」と、オーガニック系食材宅配会社に転職。仕入れ・商品開発担当者として、全国の農家さん・漁師さん・食品メーカーさん等を訪ね歩く数年間を送る。たくさんの生産者や食材と触れ合う中で、「この国には、良い食品を作ってくれる人が思いのほかたくさんいる。でも、その良さが、生活者(消費者)にきちんと伝わっていないケースが多々あり、良いものがなかなか広がっていかない」ということを痛感するように。以降、広告宣伝の部署に異動した後、独立。現在はフリーランスの立場で、広告プランニング・コピーライティング・商品ラベルやパッケージの企画・食生活や食育に関する記事執筆等を手掛けている。