VOL.16 ミツバチがいなくなると食べるものがなくなる!?~ハチに優しい農業が食卓と家計を守る
※本記事はオーガニックBtoCサイトより移管した記事になります。
https://organic-btoc.com/index.html
ミツバチが人間にもたらす恩恵は、花の蜜を集めて蜂蜜を提供してくれることだけではありません。農業の現場において、私たちの食卓に欠かせない野菜や果物を実らせるための受粉もおこなっているのです。(花粉を媒介する生物は他にも存在しますが、農業においてはミツバチの働きが圧倒的に大きいことが分かっています。)
ミツバチは世界の作物の1/3を受粉させていると言われています。受粉で実る主な作物を見てみましょう。
人参、玉ねぎ、胡瓜、キャベツ、茄子、セロリ、ニンニク、ブロッコリー、カリフラワー、アスパラガス、かぼちゃ、芽キャベツ、桃、梨、梅、いちご、すいか、さくらんぼ、ポンカン、マンゴー、パッションフルーツ、ラズベリー、ライチ、ブラックベリー、アーモンド、カカオ、コーヒー、マカダミアナッツ、ナツメグ etc.…
こういった様々な農産物はミツバチがいなくなれば入手困難になり、価格が高騰することになります。その結果、どんな暮らしが待っているのでしょうか?
●野菜や果物は高価な贅沢品になってしまう。あるいは、ほとんど入手できなくなる。
●毎朝のコーヒーが飲めなくなる日やチョコレートを気軽には食べられない時がやって来る。
●世界で消費されている油脂の半分以上は植物から得られているため、油も品薄で高価になる。
●家畜が食べるアルファルファやクローバーなどもミツバチによる受粉に依存しているため、乳製品も稀少で高価なものになる。
●ミツバチによって受粉した綿花や胡麻は自家受粉のものより品質や生産量が平均62%も高いため、ミツバチがいなくなれば品質も生産量も急落する。
…等々、様々な問題が発生し、世界中で飢えや貧困が深刻化することになります。
近年、世界中でミツバチの数が減っています。飼育されているミツバチか野生のミツバチかは関係なく、どちらも減り続けているのです。国際連合食糧農業機関(FAO)によると、花粉を媒介する生物が絶滅する速さはかつての100~1000倍にもなっており、特にハチとチョウは世界中で絶滅の危機に瀕しているとのこと。「このままいくと、地球上のすべての昆虫は2119年までに絶滅する」という説もあります。主な原因は、病気・害虫・ストレス・農薬の4つに分類され、中でも最も直接的な原因は農薬であるというのが多くの科学者達の見解です。
日本も例外ではなく、各地でミツバチの大量死や巣の異変が発見されています。国内で特に多くのミツバチが死んでいるのは田んぼで、“斑点米(変色した米)”の原因となるカメムシを殺すために農薬を空中散布しているからだと考えられています。現在、ほとんどの斑点米は機械で取り除くことができるようになっており、食味に影響が出るほど大量に混入することはないため、農薬の必要性は低いはず。しかし多くの米農家は、「出荷時における斑点米の基準が厳しく、少し混入しているだけで等級が下がってしまうため、農薬を使わざるを得ない」と言います。
私たち消費者が、「食味に影響が出ない程度なら、多少は斑点米が混じっていても構わない」という声をお米屋さんやスーパーに届けたり、オーガニック(有機)の米を選んで購入したりすることが、“農薬に頼らない農業”を支援することに繋がります。その結果、ミツバチをはじめ多くの生物の命が守られ、地域の環境も、農産物の生産量も、それぞれの家庭の家計も守られていくことでしょう。
ライター 小林 さち
日本語学校で教師をしていた20代の頃、生徒さん達が自国の政治・文化・環境問題等について熱く語る様子に刺激を受ける。「自分も“国の底力”を支えるような仕事がしたい」「国の底力ってなんだろう?…まずは“食”と“農業”では?」と、オーガニック系食材宅配会社に転職。仕入れ・商品開発担当者として、全国の農家さん・漁師さん・食品メーカーさん等を訪ね歩く数年間を送る。たくさんの生産者や食材と触れ合う中で、「この国には、良い食品を作ってくれる人が思いのほかたくさんいる。でも、その良さが、生活者(消費者)にきちんと伝わっていないケースが多々あり、良いものがなかなか広がっていかない」ということを痛感するように。以降、広告宣伝の部署に異動した後、独立。現在はフリーランスの立場で、広告プランニング・コピーライティング・商品ラベルやパッケージの企画・食生活や食育に関する記事執筆等を手掛けている。