急速に失われつつある生物多様性を取り戻すオーガニック!
※本記事はWHY ORGANICサイトより移管した記事になります。
すべての生命の基盤ともいえる「生物多様性」
毎年、その種数全体の0.01%~0.1%が、絶滅していると科学者は警告しています。仮に全生物の種数が1,000万種だとしたら、毎年1,000種から1万種の生物がこの地球上から姿を消している、ということです。
現代に起きている種の絶滅、生物多様性の喪失が過去の大絶滅と決定的に違うのは、生物が絶滅するスピードが圧倒的に速い、という点です。
その速さは、人間が関与しない状態で生物が絶滅する場合の、1000倍から1万倍になるといわれています。
これらの数値は、科学的に算出されたものですが、いずれも幅があり、正確なところは分かりません。
それでも今、この世界で起きている生物多様性の喪失が、きわめて大規模で、深刻であることに、間違いはありません。
※出典:WWFジャパン公式HP https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3517.html#section3
生き物を育む「オーガニック」
地球規模で起きているこの危機的な窮地に、私たち人類ができることとは?
有機栽培などの環境保全型農業と生物多様性の関係が、2019年8月に発表された農研機構の研究成果により解明されました。
「有機・農薬節減栽培の水田では慣行栽培よりも多くの動植物(植物、無脊椎動物、両生類および鳥類)が確認できることを全国規模の野外調査で明らかにしました。本成果は、生物多様性に配慮した稲作によって環境への負の影響を軽減するとともに、生物多様性を活用したブランド化等により農産物に新たな価値を付与するために役立ちます。」
※出典:農研機構公式HP https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/niaes/131974.html
農研機構をはじめとする研究グループは、有機栽培または農薬節減栽培を行う水田と、行わない水田(慣行栽培の水田)の両方で生き物の調査を全国規模で行い、種数と個体数を比較しました。その結果、有機栽培の水田は、慣行栽培の水田と比較して、絶滅のおそれのある植物の種数や、害虫の天敵であるアシナガグモ属のクモ、アキアカネ等のアカネ属のトンボ、トノサマガエル属のカエル、およびサギ類などの水鳥類の個体数が多いことが明らかになったのです。
消費者が日常生活において有機農産物を選択・購入すること。そのアクションも、生物多様性の保全・再生の貢献につながると言えるのではないでしょうか。
生物多様性のための「30by30アライアンス」
2021年のG7気候・環境大臣会合にて「2030年までに生物多様性の損失を止め、回復軌道にのせること」が「ネイチャーポジティブ」という言葉で表現され、様々な取り組みが始まる契機となりました。
そして2022年12月のCOP15で世界全体で陸地と海のそれぞれ30%以上を保全地域にする目標「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」が採択されたことを契機に、生物多様性の保全についてさらに注目も集まり、世界の国々が積極的に取り組む流れとなっています。
日本では、国立公園等の保護地域の拡張と管理の質の向上及び「保護地域以外で生物多様性保全に資する地域(OECM:Other Effective area-based Conservation Measures)」の設定・管理を、この30by30目標を達成するための中心施策に据えることが環境省より発表されており、このOECMに生物多様性の保全に資するような農地や里山等も含めていく方向性もしめされています。
ますます生物多様性の保全・再生向けて、オーガニックの重要性が注目されています。
【監修】
環境省
自然環境計画課 生物多様性主流化室
室長 浜島直子
【協力】
写真提供
有機稲作農家 網本さん/埼玉県 北葛飾郡杉戸町